虎年の獅子座 日記帳
Tora-Doshi'no Shishiza's Diary


株式需給 - 今後の展開を探る 執筆日 : 2003/02/11


 実は、QUICKのデリバティブコメントとして、2003年1月21日向け原稿として書いたものです。相当前のことなんですが、内容としては当時と全く変化がありません。埋もらせてしまうのもちょっと勿体無いので、ご参考として「日記帳」に掲載しておく事にしました(^^;。最近、ジョークばっかりだったので、ちょっとシリアス調です(^^;。内容は当時書いたそのままで、変更は入れていません。

● 「ファンダメンタル要因」と「需給関係」のいずれが株価を決定するのか…。典型的な永遠に答の出ない議論だろう。中長期的にはファンダメンタル要因が株価を決定し、短期的には需給関係の方が強く影響する、というのが筆者のイメージだ。ただ、ここへ来て、需給関係がより強く株価決定に影響を持ち始めている印象が強まっている。さらに、今後、この傾向がより強くなる可能性が強まると考えている。

● 機関投資家ビジネスを中心に今年の株式市場のテーマを考えると、「持合い解消と代行返上」に尽きるだろう。いずれも明確な需給関係要因だ。普段は、「企業業績回復」や「金利上昇・低下」などもテーマになるのだが、今年に関しては、そういった声がほとんど聞こえてこない。

● 「持合い解消」に関しては、いまさら説明の必要もないだろう。銀行は自己資本額に保有株を押さえるように制限される日が近付いている。生損保にとっても、株式保有の圧縮が経営面での優先課題だ。一方、事業法人でも、銀行株などを抱え続けるリスクに対して穏便ではいられなくなっている。

● 持合い解消方法には色々あるが、

(1) 市場でのストレートな売却
(2) ブロックオファーなどで国内外機関投資家向けにまとめて売却
(3) 企業の自社株買いに対応して売却
(4) ETF組成による売却
(5) 日銀へ売却

などが考えられる。いずれも一長一短あるが、(3)と(5)以外は、市場にとって直接的な需給悪化要因になる。(4)は個別の需給悪化要因とはならなくても、先物ヘッジ売りを経由する格好で需給悪化要因になるのは、昨年夏に経験済みだ。(5)も結局は需給悪化要因の先送りでしかない。

● もう一つの「代行返上」だが、まだマーケットに広く周知されているとは言い難い要因なだけに、注意する必要があると考えている。要点は大きく二点。(A)株式資産売却に伴うストレートな需給悪化と、(B)物色内容の大きな変化の可能性だ。

● 現金返還以外にもTOPIX連動ファンドでの「物納」が認められる見込みと新聞報道があったが、これは(A)に対する対応策の一つだろう。現在、年金資金運用のかなりの部分がアクティブ運用されている。つまり、ファンダメンタル分析に基いて銘柄選択し投資する手法だ。これをTOPIX連動ファンドに組み替えるのは、言葉で言うほど楽ではないしコストも小さくない。さらに、TOPIX連動ファンドを組むには、ある程度の規模(約100億円程度か)が必要で、中小のファンドについては、実施そのものがかなり困難になる可能性が強い。

● (B)の「物色内容の変化」についても、上記(A)と密接に関係している。ファンドの現金化とは、保有している銘柄群を市場売却する事。つまり、現在保有しているファンダメンタル分析に基いて銘柄選択された"きれいな"銘柄群に売り圧力が掛かる事になる。気を付ける必要があるのは、業績悪化などのファンダメンタル要因には関係なく、「代行返上」というイベントに対して需給が発生する点。つまり、一時的にしろ、"きれいな"銘柄群が理不尽に売られ、需給関係が株価決定を支配する可能性がある。

● 一方、TOPIX連動ファンドに組み替える場合でも、"きれいな"銘柄群に売り圧力が掛かる可能性が高い。TOPIX連動ファンドを組むには、アクティブファンドとして数百銘柄程度保有していたファンドを、東証1部上場のほぼ全銘柄に投資するように入れ替える事を意味する。つまり、保有していた数百銘柄をそれぞれ個別にマーケットウェイト相当分だけ残して売却し、その売却代金で、これまで保有していなかった東証1部の他の銘柄、約1000銘柄以上、をマーケットウェイト相当分購入する事になる。当然、既存で保有していた銘柄は売られ、これまで保有していなかった銘柄群が買われる事になる。この際もファンダメンタル要因はほとんど関係ない。「東証1部に上場しているから」というだけの理由で、買われる銘柄群が出てくるだろう。

● 実は、同じような事は既に市場は経験済み。印象に残っているのは、昨年夏のETF組成に絡む動きだろう。あの時は、某機関投資家の政策保有ポートフォリオ(いわばアクティブファンド)をTOPIX連動ファンドに組み替える作業が行なわれた。その際、NTTドコモなどの他、中小型株を中心に幅広い銘柄群が妙に値上りした事を覚えていると思う。当時は、新規キャッシュ流入があったので、買いの方が目立った印象があったが、代行返上に絡むファンド組み替えでは、手持ち資産の範囲で遣り繰りする必要があり、買われるだけではなく売られる方もかなり目立つと予想している。

● ただ、いずれの方法においても、代行返上された後、受け皿となった年金資金運用基金が再び株式を買う可能性が高い。その際、TOPIX連動ファンドの買いになるのはほぼ確実。この点だけ考えても、仕組みを知り、背景を知り、対策を考え、研究し、そして活用する事が大事。それが、プロフェッショナルだ。

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