虎年の獅子座 日記帳
Tora-Doshi'no Shishiza's Diary


某米機関投資家ポートフォリオ・マネージャーの手紙 執筆日 : 2000/02/13


 米国に来てから、米機関投資家を訪問する旅に出る機会がぐんと増えました。もちろん、相場についても話をするのですが、それ以上に、彼らの普段の仕事ぶりを垣間見ることを、とても興味深く追求しています。
 そんな中、某米有力機関投資家シニア・ポーフォリオ・マネージャーからEmailが舞い込んできました。これが大変興味深い内容で、証券営業マンにとっては、大変耳の痛い話だったのですが、面白かったので、簡単に書き記したいと思います。今回は短編です。

● こちらでの法人証券営業では、EmailとVoice Mailは、好き嫌い以前に手放せないものとなっています。実際問題、電話をして、ファンド・マネージャーやポートフォリオ・マネージャーと実際に話をすることが出来るのは、多分、確率にして5%未満だと思います。殆どの場合は、Voice Mailに録音されることになります。最初は、さすがに味気ないとは思ったのですが、それはそれで工夫次第で聞いてもらうことが出来るようになる事も分かってきました。

● その一方で、全世界からEmailとVoice Mailを受け取る機関投資家にとっては、実際、信じられないような数を受け取るだけに、全てに目を通し、メッセージを聞くことはほぼ不可能になっています。普通のファンド・マネージャークラスで、1日のEmailが約300-500通、Voice Mailも50件は下らないとのこと。有名なファンドマネージャーになると、これを遥かに上回ることになり、まっとうな対応は不可能な状態になるそうです。

● そういった状況下、ある有名な機関投資家の、しかも有名なシニア・ポートフォリオ・マネージャーの方からメールを頂きました。その内容が、かなり面白かったので、少し書いてみたいと思います。現在の米機関投資家のおかれている境遇がわかるし、営業担当者の対処方法のヒントにもなります。いずれ日本もこうなるだろうな、というのも予想できますし…(^_^;)。

● なお、原文は英語です。私が適当に和訳しましたので、その点、ご了承を!

証券営業担当の皆様へ。

毎日、一晩で私の手元には500〜1000通のEmailが届きます。これは業績発表シーズンかどうかで増減はあるのですが、普段でもこれくらいはあります。さらに、50〜100件程度のVoice Mailが一晩で届きます。最近は、これらのEmailとVoice Mailを、オフィスに着いてから処理するのではなく、オフィスまでの電車の中で、オフィスに着く前に、処理するようにしています。ちなみに、オフィスまでの通勤で、電車に乗っている時間は45分間です。

まず、Emailの処理から取りかかります。

  1. まず、ファイルがアタッチされているものについては、無条件に全て削除する。
  2. 残りのEmailをサイズ順に並び替え、2Kb以上のものを全て無条件に削除する。
  3. 上記2ステップで、500〜1000通のEmailは、大体、50〜100程度に減る。
  4. ここで、初めてSubject欄と送信者名を見て、興味のある内容(主に注目している銘柄の業績変化、信頼するアナリスト名など)にしるしを付ける。
  5. それ以外を全て削除。
  6. ここで初めて、メールの内容のチェックにはいる。この段階で、当初の500〜1000通のEmailは、大体20通程度になる。くどい内容は最初の2行を読んで即削除。要点を5点程度にまとめてあるもののみ、目を通す。

ここで一言だけサジェスチョンを。「もしあなたの顧客が"全てのEmailを読んでいる"と発言したなら、彼は完璧に嘘をついているか、もしくは、あまりにも重要でない人物過ぎて、自分の時間の使い方を知らないかのどちらかだ」。

次いで、Voice Mailの処理に進みます。Voice Mailは、発信者の電話番号とメッセージの長さ(時間)しか分かりません。なるべく発信者の電話番号と発信者の名前を結び付けようとするのですが、これはかなり困難なことも事実です。

  1. まず、長さが1分間以上のものを、すべて無条件に削除する。
  2. 次いで、発信番号から判断して、自分の信頼するアナリストや営業担当者のVoice Mailにしるしを付ける。
  3. それ以外を全て削除。
  4. これで、大体20程度に減るので、そこから実際にメッセージを聞き始める。
  5. 最初の10秒間程度を聞いて面白くなければ、すぐに削除。次に進む。

そして、Voice Mailを聞き終わる頃に、ちょうど45分間の電車の旅が終わります。

● 彼のEmailはここまで。自分が主張しているように、短くてポイントが絞ってあります。日本では、何でもレポートをくっつけてEmailを送れば、ファンドマネージャーから感謝されると考えている法人営業マンが多いかもしれませんが、米国では、頼まれた時は別にして、誰にでもレポートをくっつけてEmailするというのは、既に非効率で相手の都合を考えない"非常識な行為"と考えられ始めています。つまり、相手方のコンピューター資源を浪費するだけ、という事なのです。

● 以前、私がロイターで働いていた時も、口を酸っぱくして言われていたのが、「一番大事なのはヘッドライン、次いで最初の2〜3行」と言う事です。新聞を読む時の事を考えれば分かりますが、まずヘッドラインを読みます。ここで興味がなければ、本文に進むことはありませんよね。誰でもそうでしょうし、新聞全ての記事を読んでいる人なんて、実際問題、ほとんど居ないと思います。居るとすれば、それは"仕事がなくて暇な人"という事でしょう。上記のポート・マネージャーも全く同じなんです!

● というわけで、これから日本もそうなると思います。公言はしてなくても、既に日本のファンドマネージャーも大量のメールを受け取っていると思いますし、実際問題、多くは一度も読まれることなく、そのままTrashに行っているはずです。証券営業にとって、Emailはすごい武器になります。しかし、使い方を知らなければ、単なるコンピューター資源、通信資源の無駄使いになってしまうのです。自戒を込めて・・・。

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