虎年の獅子座 日記帳
Tora-Doshi'no Shishiza's Diary
都銀・長信銀各行の決算短信から見た株式デリバティブ
執筆日 : 1998/05/26
| 都銀・長信銀の決算が出揃いました。きょうは98年3月期決算のなかでも、新聞にほとんど出てこない株式デリバティブの現状について書いてみたいと思いました。株式デリバティブと言っても、取引所で取引される商品から、俗に言うOTCデリバティブまで多種多様です。エクイティスワップなどが解禁されていないので、そこまでワイルドな商品は出てきませんが、各行が何を考えているのか、少しでも見えてくれば興味深いと思います。なお、すべての情報は各行の決算短信の開示内容に基づいています。 |
● 月曜日にさくら銀行と長信銀の決算が発表されて、これでほぼ全部の大きな銀行の決算が出揃いました。マスコミなどで報道されているSEC基準の不良債権額や引当率の話、そして有価証券含み損益になどついての話は、日経新聞などにかなり詳しく出ているので、そちらを参照して下さい。この場所では、他ではなかなか見ることの出来ない株式関連のデリバティブ開示情報について、まとめて見ました。
● 今回の決算発表で、私はひそかに「デリバティブ情報の開示」に注目していました。銀行の決算ですから、為替、金利、債券などのデリバティブについての情報が、これらの短信には山盛りになっています。しかし、証券と銀行の境目が崩れ去ろうとする今、私は株式関連のデリバティブに注目してみたのです。株式絡みのデリバティブ情報と言えば、以前、東京海上が日経平均先物を使ったヘッジスキームを詳細に開示した記憶が鮮明です。今回も色々とありました!(^O^)。
● なお、公表されているのは、全て期末時点の残高です。為念。
- 日本興業銀行(8302)は、株価指数先物の売り建ちが1110億74百万円、買い建ちが564億81百万円で、期末で19億41百万円の評価益。前々期にはOTCオプション(コール)の売りがあったのですが、前期末では、それは無くなっていました。
- 日本長期信用銀行(8303)は、株価指数先物の売り建ちが92億43百万円で、期末の評価益は3億60百万円。特に目立つというほどの量ではありません。
- 日本債券信用銀行(8304)は、株価指数先物の残高は何も無く、取引所取引の株価指数オプションも何もなし。ただ、OTCオプションで、プットの買いが契約額で1307億89百万円もありました。より実勢を示すプレミアムの額で見ても655億60百万円は、決して少ない額ではありません。なお、この取引は前々期の契約額2486億53百万円からは相当に減少しています。なお、全て“1年超”と区分されています。長期のデリバティブであることが分かります。
- 第一勧業銀行(8311)は、株価指数先物/オプションの期末残高は、売り買いともに全くのゼロ。う〜〜ん・・・・(^_^;)。
- さくら銀行(8314)のデリバティブは、かなり興味深いと思います。実は、前々期も“株式関連スワップ”という項目に開示があったので、業界人の間では、かなり話題になっていました。当時は“1年超”というカテゴリーだったのが、前期は“1年超”では無くなっていました。契約額は前々期末で1659億28百万円。前期末では契約額は7187億21百万円と急増したものの、時価はたったの6億42百万円で評価益も同額。契約額が巨大でも実際の金額が大した事無いというのは、オプション絡みの取引の特徴でしょうか。実際に同行が実施しているのは、単純なオプションの売りではなく、複雑なスキームだとは思いますが、実態は不明。某米系証券/銀行にでも問い合わせてみてください(^_^;)。なお、一時期マーケットで噂になっていた日経平均先物など、単純な株価指数先物の売り建玉は、残高がゼロでした。
- 東京三菱銀行(8315)は、株価指数先物の買い建ちを13億28百万円。期末は15百万円の評価損でした。まぁ、それほど気にする事はない残高ですね。他行が軒並み売り建ちなのに、東京三菱銀行が買い建ちというのは、少し興味深いです。
- 富士銀行(8317)も興味深い戦略を取っています。株価指数先物の残高はゼロ。ところが、株価指数オプション(取引所取引)で、コールとプットを両方とも買い建ちしていました。契約金額はコールが15億05百万円、プットが40億81百万円と大きく見えますが、オプション料はコールが8百万円、プットが27百万円とわずか。期末時点の時価でコールが7百万円、プットが17百万円と両方合わせて10百万円の評価損となっていました。期末の残高だけを見ていては、何をやろうとしていたのか不透明です。
- 住友銀行(8318)は、株価指数先物の売り買い、株価指数オプションの売り買いなど、残高は全くゼロでした。期中の残高推移がまったく分からないので、実際に何もやっていなかったのかどうかは不明。
- 大和銀行(8319)も、株価指数先物/株価指数オプションの売り買いの残高は全くゼロ。本当にやってないのか、期末がゼロだっただけなのかは分かりません。決算短信の限界ですね。
- 三和銀行(8320)は、デリバティブに積極的と言われる割には、株価指数先物の残高は少なめ。期末で売り建ちは103億39百万円で、期末では4億99百万円の評価益でした。
- 東海銀行(8321)は、株価指数先物の売り建ちが114億01百万円、買い建ちが29億17百万円で、期末は3億17百万円の評価損。
- あさひ銀行(8322)は、株価指数先物の売り建ちを2499億98百万円保有し、期末で109億84百万円の評価益。意外なまでに大きな残高から、関係者の間では結構話題になっています。期末の株価水準と評価益から逆算すれば、同行は、1万7000円近辺でこれらの玉を売り建てたことになります。手口を分析すれば、某米系証券でその玉を建てた可能性が強いのです。まぁ、人の財布を覗き見しているようなので、この辺で止めておきます(^_^;)。
- 三井信託銀行(8401)は、株絡みのデリバティブの残高はゼロ。
- 三菱信託銀行(8402)は、前々期は先物の売り買いが残っていたものの、前期は残高ゼロ。ただ、株価指数オプションでコールの売り建ちが契約額で21億円程度(オプション料で31百万円)、プットの買い建ちが契約額で1億65百万円(オプション料で2百万円)ありました。期末で合計の評価益は17百万円。
- 住友信託銀行(8403)は、株価指数先物/オプション取引に積極的なようで、株価指数先物/オプション取り混ぜて、色々なポジションが期末に残っています。内容は、株価指数先物の売り建ちが71億円強、買い建ちが46億円強。さらに、オプションもプット/コールともに売り買いの残高は多く、全て合わせて74百万円の評価益でした。
● これらの決算短信は、全て、決算短信の原本をスキャンしたものがBloombergの端末から簡単に取り出す事が出来ます。私もそうやって、一つ一つ調べました。本当に便利になったものです。こういった機能があれば、決算短信入手のために証券会社に借りを作る必要ないですしネ。このページをご覧の皆様は、多分、各行のホームページから決算情報が入手できると思います。
● 今年7月から、エクイティ・デリバティブ(エクイティ・スワップ関係)が解禁される予定です。持ち合い株式による歪んだポートフォリオを是正する手段として、エクイティ・スワップは有力なツールになると思われます。実際、東京海上のデリバティブ開示もそうでしたし、上記の多くの銀行の先物の使い方は、ポートフォリオ是正にあると思われます。
● 利用者側/業者側としては、お互いにメリットのある手段だったとしても、注意しなくてはいけない点があります。それは市場参加者としての立場です。デリバティブ、特にOTCデリバティブは、売り手/買い手が相対で商売することが圧倒的に多くなります。そのため、どういった取引がどこで成立したかという情報は、市場には出回らないのです。そのため、市場の動きに一段と注意しておかないと、思わぬところで足元をすくわれてしまう可能性があります。
● 一般的に言って、銀行は株式を手放したく思っています。そのため、エクイティ・スワップにしても、その際のリスクと手間暇を軽減する格好になる可能性が強いのです。設定のとき、デリバティブ業者はどうするか?基本的には、リスクをヘッジします。つまり、銀行が売る代わりにデリバティブ業者が売るのです。ただ、分散するのでわかりにくくなりますけど・・・・。
● "デリバティブ"という言葉を聞いただけで、頭が痛くなる方々もいらっしゃると思います。でも、デリバティブはそんなに複雑なものではなく、私は「仕出し屋」さんと称しています(^O^)。材料を仕入れて調理するのは、その気になれば誰でも出来ます。ただ、材料を仕入れるのにも、魚、肉、野菜などをバラバラに仕入れる手間と、それを調理する手間を考えると、「仕出し屋」さんに頼んだ方が良い場合も往々にして有ると思うのです。それがデリバティブです。デリバティブ業者は、色々な細々した部品を色んなところで調達し、顧客のニーズにあう商品(料理)に仕立て上げる訳です。どうです?こう考えれば簡単でしょう!
● 各行の株式デリバティブ商品への取り組み姿勢を見ていると、他の姿も見えてくるような気がします。
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